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ぼくがテント村に住み初めて、8年目になる。毎年誕生日をテント村で祝っているから、ここでの誕生日会は8回目ということになる。
なぜだか、一番はじめの年の誕生日会は、よく覚えている。たき火が、どんどんと燃え、それを囲んで大勢の人がいた。ひどく個性的なテント村の住人たちも、大勢集まると互いに相殺されて、なんだかちょうどいいバランスが生まれるようだった。たまに、テントを訪ねてくる京都の友人が、偶然誕生日に来た。彼は、山で一人で暮らしたりするような野生児で、それも人恋しいからその結果山で一人で暮らすような葛藤を抱えた男だけど、たき火をいじる彼は、その場にぴったりだった。村長みたいだった人が「自分の城だから、それぞれのスタイルで生活すればいい。」みたいなことを言った気がする。近くのテントの全身タトゥの入った巨漢のブラジル人が、どこからかナンをたくさん買ってきてくれた。常に体を踊らせているヒーリングをしていると称するスキンヘッドの男がやってきて(とても不安そうにみえた)、ぼくのテントの近くに枯れ葉を集めて住みだしたのも、その晩からだった。とても大勢の人がきたようだったが、40人くらいだったのだろうか。最後に残った人たちが(それでも20人くらいいたようだったが、、)、空にしたテントにぎゅうぎゅうに入りこんで、それぞれが一芸をした。近くの小屋のキクチさんという女の人が、ハスキーな声で、シャンソンか何か歌ったのがムードがあった。あの誕生日会をなんでこんなに覚えているのか、たぶんテント村でやったイベントとして初めてのものだったからかもしれない。様々な人が、一つの場所に集まる時の輝きみたいなもの、なにがそこから生まれるわけでもないが、その場が奇跡的なバランスと平安で充足している感じが、刻印されている。 そして、今年は40歳の誕生日でもあった。だから、40年の総括、と題する講演会をすることにした。14時くらいから始めるはずだったが、11時には千年さんがやってきて、イスやテーブルを並べてしまった。だから、別に人がやってくるでもなしに、千年さんとおしゃべりをしているうちに、時間は過ぎていった。4、5人集まった段階では、男ばかりだった。白髪の話になる。「頭に白髪ある?」。「白髪はあんまりないけど、陰毛に白髪増えてきた。あっちは、もう70歳くらいかな。」とぼく。「ガハハ、こないだあそこの白いのを抜いたよ。痛かったよ。間違って黒かったりして。元気だけどよ。ガハハ。」と千年さん。「抜いた方がいいの。最近、鼻毛に白髪が増えてきて。」と知人。「まゆげは白髪にならないよね。」と別の人。「ああ、まゆげはならないみたいだ。」と千年さん。つくづくと千年さんの顔を見ると、頭はごま塩だが、まゆげは黒い。なるほど。 懐かしい顔がやってきた。元テント村のマドンナというか、看板であった、みっちゃん。デヘヘヘヘ、という笑いは変わらない。 「どう、わたし太った?太ってない?」という挨拶も変わらない。相変わらず、最高だ。ふと後ろを見ると、輪からはずれた近くの木の根に大きな体でしゃがみこんで、こちらをみてぶつぶついいながら笑っている。猫みたいな絶妙な距離感。みっちゃんが「ハカセが死んだんだよ。電話通じないんだよ。坂がそう言ったんだよ。105号だよ。」「105号って?」「105号だよ、死んだだよ。」「電話通じないから死んだとは限らないと思うけど。」「いや、死んだんだよ。坂がそう言ったんだよ。105号だよ。」。何が、105号なのかはよくわからなかったが、ハカセが死んだというのはありえることだ。脳溢血で倒れて近くの病院に入院していたことがある。その時、パジャマ姿でベットを抜け出して、テント村(エノアール)に遊びにきた。禁止されている煙草をうまそうに吸っていた。言葉はそれほどうまく口から出ないようだった。病院は退院したのだけど、もう1年くらいは連絡がとれない。みっちゃんをつれてきた西さんも、ハカセに電話して、通話できないことを改めて確認している。西さんは、今は生活保護でアパートに暮らしている。「毎日、何をしているんですか。」「うーん、何にもしてないね。最近、地デジにしたんよ。たくさんチャンネルあるんよ。それを見てる。つまらんね、こんな人生。」と情けなさそうに笑った。「行くところがどこもないんよ。」。 人が10人くらいになったところで、似顔絵を描いてもらう。これは毎年やっていることだ。5歳から55歳くらいの人が描いた自分の顔。40歳の顔。 それから、40年の総括、を話した。20人くらいの人が聞いていた。しかし、何も考えていなかった。いや、考えようとはしたのだけど、あんまり思い浮かぶこともなかったのだ。それで、そんなことを言った後、質問やヤジをとばされながら、それでも30分以上(1時間くらい?)話していた。それぞれの人(そこには、ぼくと長く関わってくれている人もいた)の見方と、ぼく自身のぼくへの見方。結果としては、けっこうおもしろかったのではないかと思う、ぼくの話は。いつも辛口のIさんからも、ほめられたので。こんなイベントは、誕生日以外ではあんまり考えられない。 それから、ケーキ。Iさんの手作りケーキ。千年さんの買ってきたケーキ。文芸部で一緒にやっている宮さんの手作りケーキ。上さんの手作りチーズケーキ。(不惑なら迷わず、迷わないためには地図が必要。だからチーズケーキ、とのこと)。いつもエノアールにきてくれる遠藤夫妻のベジタブルケーキ。ちょうどウクレレで歌を歌う魚さんがやってきて、ハッピバースディの歌の演奏してくれた。ケーキだけで、腹がふくれた。もう、日が暮れた。それから、なぜか(こんなことはいつもしない)ぼくに贈る言葉プラス一芸大会。一芸は、産まれたばかりの子牛の脚、政治的ミニスカ党の演説、天皇の真似、ぼくがテント村にやってきた時の再現朗読、歌や踊り、などなど。 贈る言葉は、ほめられてくすぐったい感じだったが、昔からの友人のO君が「なんで称賛しないといけないの!」と鋭くつっこむ。「誕生日だからだよ」とぼく。「あ、そうか」とO君。 それから闇鍋をして、終わったのが夜11時。雲が出たせいか全く寒くない夜だった。
by isourou1
| 2010-12-12 18:40
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