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オカルトとかスピリチャルとかよばれる領域のことはあまり信じていない。ただし、猫のテレパシー、気功、虫の知らせの3つはあるように思っている。 虫の知らせ。いまわの際にいる人の声や姿が遠隔の場所で知覚されるという現象は経験したことがある。相手はバンドで歌っていた人で長年の知人だったが、日頃会うことはあまりなかった。虫の知らせというのは夢の中の登場人物にも似て、親しいから現れるわけではないかもしれない。福祉施設で夜勤をしていた時のことである。ガランと広い部屋で夜明け前に、その知人の声が耳元ではっきりと聞こえた。「私の声を聞いて」。目が覚めたが、もちろんあたりには誰もいなかった。同僚から「あの部屋は出るのよ」と言われ、そんなものかと思ったが、後日、その夜に知人が亡くなっていたことを知った。 ぼくは、最近、区役所の敷地内に寝ることもあるのだが、古参の警備員が声をかけてきた。旧区役所の地盤下にあった駐車場に、30名前後の人が泊まっていた時のことも彼は知っている。2012年に地下駐車場から野宿者は排除され、やがて区役所は取り壊された。現在は仮庁舎である。同所に泊まることがあるHさんについての話を警備員がはじめた。「おどろいたよ、Hさんすっかり変わっちゃって。地下駐車場の頃は「ウサギ」と呼ばれていたんだよ。景気よくってさ、まわりの連中に飯をふるまったりしていたよ」「へぇ、想像できないね。何でウサギって呼ばれていたの?」「飼っていたからだよ」。地下駐車場は朝6時までに荷物を畳んで立ち去らないといけなかった。「ウサギも台車に載せて出ていったよ」と警備員。ぼくの知っているHさんと全然ちがう。そんなマメなことをしそうにないし、羽振りがよいHさんというのも想像しにくい。日課がシケモク拾いのどちらかというとトボケた味のある人だ。たまに、大声を出したりするけど、うーん。「人ちがいじゃないの?」と言うと「そんなことないよ。「ウサギ?」って聞いたら、「うん」とうなずいていたもの」と警備員は確信している。その警備員が「たしかに地下駐は天国だったな」と言った。どちらかというと仕切りがうるさい印象だったので意味は分からなかった。2日後、この公園でSさんが亡くなったという話を聞いた。ぼくとSさんの関係はあまり良いものではなかった。そのためもあって、悲しいというよりも狐につままれたような気がした。Sさんには、渡したチラシを目の前で破り捨てられたことがあった。怒りや不満というよりも、力を誇示して反応を試すような嫌な感触があった。Sさんは、公園の歩道橋下で寝ていた。雨がしのげる貴重な場所であるが、Sさんにそうじを強要されたり、出ていけと言われたりして、ほとんど他に寝る人がいなかった。Sさんのようなタイプはたいてい管理側のお偉方と仲良くして、管理側も滞留者を増やさないために利用する。ぼくとSさんは、すれ違いざま、にらみ合うような時もあった。ふつうの会話をした記憶もない。ぼくにも仲の悪い人や嫌いな人が複数いて、中には暴力癖がある人もいるし、テントの外は常にどこかヒリついている。ただし、ぼくのSさんの印象はおそらくはかなり一面的だろう。Sさんはいくつかの炊き出しを手伝っていたし、それなりにSさんと親しかった人はショックを受けている様子だった。たしかに、最近のSさんは元気がなかった(ぼくからチラシを受け取ったりもしていた)が、あまりに突然の死であった。テント村の人とSさんの思い出を話しているうちに、ぼくの隣に住んでいた加藤さん(故人)がSさんのことを「ウサギのおじさん」と呼んでいたことを思い出した。それで、先日、警備員が話していた人がSさんであることに思い当たった。Sさんは駐車場に住んでいた人だった。ただ、HさんとSさんでは風貌も人格も口調もまるでちがっていて、似ているのは白髪が多いことくらいだ。なぜ、警備員が間違えたのか分からない。いずれにせよ、亡くなる数時間前に、警備員とぼくはSさんの話をしていたことになる。虫の知らせだとしても混線気味なのが野宿の世界らしいのかもしれない。
by isourou1
| 2017-05-16 12:04
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