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ホームレス文化とは何か、いかに生きていくか
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3人の男の話
今年になってからどうも体調がすぐれない。テント村(正確には元テント村)の親しい住人が雪の翌日倒れて大手術したり、明治公園では野宿者追い出しの攻防が緊迫していたり、都営霞ヶ丘アパートでも東京都が相次ぐ追い出し文書を送ってきたり、情報公開請求が公園住所を理由に拒否されて意義申し立てしたりと、自分が関わっている状況が様々深刻な様相になっており、それらのストレスが重なっているのだろう。てきめん胃腸にきて、絶食の数日を過ごしようやく回復の兆しが見えてきた。そして、久しぶりに何の予定もない一日だった。

夕方になり、今年のスケジュール帳を買いに行こうと思った。テントを出ると、隣のテントのアサカさんが園道を竹ぼうきで掃いていた。別に話しかけなくても良いのだが、急ぎの用事がないので何か言いたくなる。「寒いですね」この季節の8割はこの言葉からだ。アサカさんが手を止めて近寄りながら「明日はもっと寒いってよ」「雪ですか」「うーん、雪か雨、イヤになっちゃうよ。お出かけ?」「寒いから走ろうと思って」とぼくはランニングシューズを履いて準備万端。「変わった人だね。もっとも、俺も寒いから掃除しているんだけど」。思わず笑う。「そういえば、風邪治ったんですか?」数日前に風邪薬がほしいとアサカさんがやってきたことを思い出した。「うーん、薬は飲んでいるよ。テントのチャック壊れているから寝ていたら風が入ってきてさ」「それは寒いですよ」「何か被って寝ている?」「頭から布団を被ってますけど」「それじゃ足が出ちゃうでしょ」「たしかに。でも服とかでカバーしてますよ」「マスクがおすすめだね」とアサカさんは得意げ。「一晩マスクしていたら耳がゴムで痛くなりませんか?」「新品はだめだよ。2・3日使ったゆるゆるの奴じゃないと。ゴムの跡が顔に付いちゃうし」「なるほど」使い捨てにしていたぼくとしてはゴムのゆるさという観点は新鮮だ。「マスクはゆるくなくちゃ。ゆるゆるマスクで風邪が治ったよ」とアサカさん。「さすが先達の言葉は含蓄がありますね」とぼく。アサカさんは再び掃除を始めた。

結局、町を2、3時間ぶらついてからテント村へ戻ろうとしていた。公園に向かう広い並木道をうつむき加減で歩いていく白いダウンジャケットの男の後ろ姿に見覚えがあった。ぼくの隣の隣に住んでいたタカイさんだ。「お元気ですか?」。タカイさんは顔をあげて、「ああ、もうノジレン(支援団体)の炊き出しやってないのな。M公園の階段下に行ってみたら誰もいなくて。もうやってないんだ」。タカイさんの言葉を最後まで聞いてから、「やってますよ。ただ場所が変わったんです」と教えた。「ああそうなの。そこも閉められると聞いてたから」。この区では、野宿者の住む公園や炊き出しをする場所を次々に閉めてきた。ただ区長が代わり、一部の公園だけは年末年始や夜も開くようになった。「俺、ヤクザに連れられてずっと横浜の寮に入っていたでしょ。今日出てきちゃったんだ。同じ部屋のやつがあんまりいじめるもんだから、我慢に我慢を重ねていたんだけど、とうとう、もういい加減にしろって大声出しちゃって」どうりで炊き出しの状況が分かっていないはずだ。「番頭さんとかはいい人なんだ。俺あんまり風呂入らないからさ、心配して、タカイさん遠慮することないよ一番先に入ればいいよ、なんてさ」。「給料は出たの?」と聞くと「月3万だけ、でも飯は出るからさ」。「仕事はするんでしょ?」と聞くと「もう俺は年だから働かなくていいって言うんだよ」。飯場かと思っていたら生活保護の宿泊所の話だった。「貧困ビジネスだからさ、ヤクザが金をみんな抜いちゃうんだろ」とタカイさん。月に3万を渡すのはまだましな方かもしれない。「仕切っているのが嫌な奴というのはよくあるパターンだよね。でも、まだ生保切れてないだろうから、ケースワーカーに相談してみれば」と言う。「本当はそれがいいんだろうけど。紙出されると俺、文字が読めないからってサインしちゃうんだよ」。何にサインしたんだろう?。「俺、一年前も出てきただろ」。そういえば、タカイさんがこの区で生保を取った時はぼくが役所に同行して、その場で宿泊所(正確にはドヤのようなホテル)の個室に入ったのだった。そして、しばらくしたら出てきてしまった。本人は掃除の人と口げんかしたと言っていたが、どうやら本当の理由は別にあるらしいことが後で分かった。今回もそういうこともあるのかもしれないとぼんやりと感じた。「タカイさん、今から行けばまだ炊き出し間に合うよ」と水を向けた。「ありがとう。行ってきますよ。また何かあったら相談させてください」

公園に近づくと寒さが増す。町は光に包まれ、公園は薄暗いせいもあるかもしれない。陸橋の下の歩道にしゃがみこんで、黒いダウンジャケットでアイフォンをいじっている人がいた。顔ははっきり分からないが、野宿しながらアイフォンをしている人といえばだいたい決まっている。下山さんは少し耳が聞こえにくい上にイヤフォンをしているから大声で呼びかけた。「最近どうしていたんですか?」下山さんはイヤフォンをはずして「年末から仕事したり、遊びに行ったりしていたから、あんまりいなかった」「寒さは大丈夫ですか」「大丈夫。0度くらいまでだったら何でもないから」「いい寝袋を持っているんですか」「良くはないけど2枚重ねているから寒くないよ」ぼくより年が一回りくらい上の下山さんはベンチで寝ている。自作パソコンなども作っていたこともあり、IT関係にはめちゃくちゃ詳しい。野宿しながらも、モバイルパソコンやスマホ、ソーラー充電器などたくさんの機材を所有している。なので、下山さんにはそういう方面を主に聞くことにしている。「最近、タブレットを手に入れたんですけど、パソコンとちがって使いにくくて」とぼく。「基本的に見るだけだからね。編集とかそういうのは不向きだよ。もうちょっと早かったらなぁ。月500メガまで無料のシムカードがあったんだけど」「それはすごいですね」「でも、クレジットカードが必要なんだよ。今使っているアイフォンにしても無料アプリなのにクレジットが必要だったりしてさ。ふざけているよ。まぁ俺の場合は、そういうの関係なくなっているんだけどね」と下山さんの目が光る。近場のマクドナルドが先月閉店して、電源やネットをする場所に困っているという話題で盛り上がる。そのマックはぼくにとって、オフィスみたいなものだったからたしかに困っているのである。「ところで、猫が行方不明の貼り紙たくさんしていたけど、見つかったの?」と下山さん。下山さんは猫好きでもある。「ああ、見つかりました。ただ飼えないから、Yさんに頼んで里親を探してもらうことになりました。貼り紙したら電話がいろいろかかってきて、猫のことになるとみんな好意的でしたね」「ああそう。キャットフードの方がドックフードより売れているそうだからね。あの動画見た?世界猫あるき、というテレビ番組があるんだけど、それを猫たちが見ているんだよ。群がって。すごいのなんか、画面に背伸びして乗りかかって」と下山さんがうれしそうに笑った。だいぶ風も吹いてきた。
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by isourou1 | 2016-02-07 12:28 | ホームレス文化


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